退職後の給付金活用術!失業手当、補助金を詳しく知ろう

退職後の給付金活用術!失業手当、補助金を詳しく知ろう

退職後の給付金活用術

最終更新日 2023/12/31

 
「コロナ禍」は過ぎましたが、企業の業績は悪化し、休業、倒産、雇止め、解雇、様々な形で、又は、不本意な形で離職に追い込まれてしまった方々も多数おられると考えます。
 
しかし、明日からの仕事はなくなってしまっても生活は続きます。また、家族を養っていく立場にある方にとっては、収入がなくなることは死活問題と言っても過言ではないでしょう。
 
今回は、社会保険労務士の視点で退職時に受給できる給付、条件、期間、金額などの詳細をトータルでお伝えいたします。このような行政機関からの給付は、「申請主義」といい、原則として、まずは、申請しなければそもそも受給することができません。
 
また、どのように、いつ申請するかによっても受給できる期間や金額にも差が生じてしまいます。
 
原則として、これらの給付の多くには「時効」が定められていますので、気づいたときには「時すでに遅し」を回避できるよう自己防衛の意味でも確認していきましょう。

未払賃金立替払事業

まずは、今回メインで解説していく「給付」の前にそもそも企業が倒産などで、従業員への賃金が不払いのままの状態になっている場合もあろうかと考えます。
 
そこで、そのような場合の対応策を手短に確認しましょう。尚、根拠となる法律は、「賃金の支払の確保等に関する法律」です。
 
企業から解雇され、賃金や退職金が支払われていない場合、立替払いを受け取ることができるかもしれませんので、最寄りの労働基準監督署に尋ねてみるといいです。
 
出典元:東京労働局
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/k-mibarai.html
 
給与などの支払いは、本来、事業主の責任に属するものであるため、労働基準法では、その義務の履行確保の為に、労基法24条に「賃金支払い5原則」と言い、

  1. 通貨払い(通貨で払わなければならない)
  2. 直接払い(直接労働者に払わなければならない)
  3. 全額払い(全額を払わなければならない)
  4. 毎月1回払い(毎月1回以上払わなければならない)
  5. 一定期日払い(一定期日に払わなければならない)

と定められています。
 
結論としては、退職時の給与が未払いの場合、「未払賃金の立替払事業」という制度があります。これは、1年以上労災保険に加入している事業所が破産などの事由に該当し、かつ、退職する従業員への未払賃金がある場合、未払賃金総額の80%相当を事業主に代わって立て替えてくれる制度です。
 
そして、あまり知られていない論点として未払い賃金には、「退職手当も対象」となること、年齢では「45歳以上の層が最も立て替え額の上限が高い」という特徴も併せておさえておきましょう。
 
具体的な金額を示すと、以下のとおりとなります。「45歳以上の方」の「未払賃金の上限額」は、370万円で「立替払の上限額」は296万円です。(370万円×80%=296万円)
 
尚、未払賃金総額とは、退職日の6か月前の日から立替払いの請求日の前日までの間に支給期が到来したもののうち、いまだ支払われていないものの総額(2万円未満のものは除く)を指します。

雇用保険

雇用保険法とは、労働者の方々が失業した場合などに労働者の生活の安定を図ることや求職活動を容易にすること、再就職の促進や職業の安定を確保するために、労働基準法と時を同じく昭和22年に制定された法律です。
 
今回、退職するにあたってもどのようにして生活の安定を担保する給付が設けられているのかを確認していきましょう。

雇用保険被保険者とは?

まず、給付の話に行く前におさえておきたい論点として、そもそも自身が雇用保険の被保険者であったことが前提です。
 
では、早速、原則的な被保険者の定義から確認しましょう。被保険者とは、適用事業(労働者が雇用される事業のこと)に雇用される労働者であって、1週間の所定労働時間が20時間以上で、かつ、31日以上の雇用見込みであることです。
 
よって、雇用保険の適用が及ばない国家公務員などを除き、いわゆる正職員であればほとんど該当すると言えるでしょう。しかし、会社が意図的、又は重大な過失で、雇用保険に加入させていなかった場合は、自身が要件を満たしていることを証明する書類(雇用契約書など)を準備し、行政機関(労働局やハローワーク)へご相談されることが一案です。
 
そして、次項で受給できる給付を確認していきましょう。

退職時の給付の種類

いわゆる失業手当(正式には基本手当、以下失業手当)が最も基本的な給付と考えます。この失業保険はどのような要件を満たしていれば受給できるのかを確認していきましょう。

失業保険の「受給資格」

離職の日以前「2年間」に(※)被保険者期間が通算して12か月以上であったときです。尚、解雇などの特別な理由で離職した場合は、前述の2年間が「1年間」とし、12か月が「6か月」となります。
 
(※)被保険者期間とは、離職の日から1か月の期間ごとにさかのぼっていき、その1か月の期間に賃金支払基礎日数が11日以上ある期間のことです。
 
又、2年間の間に疾病や事業所の休業などの理由で「引き続き30日以上」賃金の支払を受けることができなかった被保険者については、当該期間を加算し、上限として、4年間まで延長されます。

失業手当の「受給可能期間」

原則的には離職日の翌日から1年間です。例外として、45歳以上60歳未満で解雇などの事由に該当している方で、離職の日まで引き続き被保険者として雇用された期間が20年以上の場合は、1年+30日となります。

失業手当の「受給額」

受給額は生活する為の重要な収入源となるために重要と言えます。まずは、失業手当の日額の計算から確認しましょう。
 
これは、「賃金日額×一定率」という式が組まれています。この賃金日額とは、被保険者期間として計算された期間の6か月間に支払われた賃金の総額を180で除した額とお考え下さい。注意すべき点として、3か月を超える期間ごとに支払われるボーナスなどは含まれないということです。

【算出式】基本手当の日額=※1賃金日額×※2一定給付率

受け取れる基本手当ての日額は、上記計算式で求められます。
※1.基本手当日額。賃金日額は年齢により上限があり、45歳以上60歳未満が最も高額となります。
※2.60歳未満は80%~50%、60歳以上65歳未満は80%~45%

賃金日額、基本手当日額の上限額

<参考:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります:令和2年3月31日」

離職時の年齢 賃金日額の上限額 基本手当日額の上限額
29歳以下 13,630円 6,815円
30~44歳 15,140円 7,570円
45~59歳 16,660円 8,330円
60~64歳 15,890円 7,150円

【算出式①】賃金日額=被保険者期間として計算された最後の6か月間に支払われた賃金の総額/180

まずは、6ヶ月の賃金の総額を6ヶ月分(180日)で割ったものが賃金日額とします。

所定給付日数

次に「所定給付日数」についてですが、ここまでおさえるとようやく計算ができます。また、所定給付日数とは、失業手当を受給できる上限日数のことです。自己都合退職の場合と解雇などの特定の理由で退職した場合で異なります。
 
出典元:ハローワークインターネットサービス
 
例えば、自己都合退職で雇用保険の被保険者として20年以上勤めていた場合は、150日分受給できるということです(働いていた会社が倒産した場合は、変わります)。それでは、ここで、一緒にどれくらいの失業手当を受給できるのか?概算を計算してみましょう。

失業手当はいくらもらえるのか?具体例

例えば月給30万円の45歳の労働者です。

30万円×6か月=180万円
180万円/180=1万円・・・賃金日額
1万円×(仮に最も低い50%として)=5,000円・・・基本手当日額
5,000円×150日分=75万円

となります。これを1年間かけて受け取れるということです。
 
※賃金日額、基本手当の日額、一定率などは年によって変動があります
 
次にどのようなスパンで受け取るのか?を確認していきましょう。

失業保険受給までのスケジュールと待機期間

まずは、失業の認定と待期の理解が必要です。失業の認定とは、失業していることの認定を受けることであり、離職後はハローワークへ求職の申し込みをしなければなりません。
 
そして、この失業の認定は、後述する待期の間も受ける必要がある点をおさえておきましょう。
 

Step1:ハローワークで手続きを行う

1。求職申し込み
2。離職票など必要書類の提出
3。雇用保険説明会の日時決定
 
失業手当を受給するためには、再就職の意思を示すため求職の申し込みが必須です。

Step2:雇用保険説明会への参加

雇用保険説明会へ参加することで、失業認定日が決まります。

Step3:失業認定日にハローワークへ行く

失業認定申告書を提出して失業の認定を受けましょう。失業の認定を受けるには、月2回以上の求職活動が必要で、失業認定申告書に実績を記載しなければなりません。
 
失業の認定とは、原則として、前回の認定日から今回の認定日の前日までの期間に属する各日について「失業しているか否か」を確認される行為と整理しましょう。この認定を受けることにより失業手当を受けるということになります。
 
原則として、求職の申し込みをしたハローワークにて、失業者が「離職後最初に出頭した日」から起算して「4週間に1回ずつ」直前の「28日」の各日について行われます。
 
また、例外的な取り扱いとして、ハローワークの指示した公共職業訓練を受ける場合の失業の認定は、「1月に1回」、直前の月に属する各日について行われます。

Step4:失業手当の受給

失業手当は通常、失業認定日から通常5営業日後に指定の口座に失業の認定日に該当する期間分のみ振り込まれます。以後、原則として4週間に1回の認定日に、失業の認定を受ける必要があります。

待機期間について

次に、待期について、確認しましょう。待期は、端的には、全く失業手当が受給できない期間と理解しましょう。これは、本当に失業しているのかを確認される期間と言えるでしょう。
 
よって、どのような離職理由であっても、この待期の期間は失業手当を受給できません。また、この待期の期間は7日間です。
 
ここまで整理すると、離職して7日経過すると失業手当が受給できるのではないか?と考えられますが、そうではありません。
 
いわゆる自己都合退職の場合は、「給付制限期間」という期間が設けられており、自己都合退職の場合は約3ヶ月間とお考え下さい。しかし、解雇などの会社都合の場合はこの給付制限期間が設けられない場合があります。その場合は待期期間が明けると受給可能ということです。
 
会社と従業員間で争いとなってしまう点として、離職理由を自己都合・会社都合どちらに該当するか?という点です。当然、従業員としては、失業手当をより早く受給出来る会社都合の方が良いでしょう。
 
しかし、会社都合の内容によっては、会社が助成金を受けることが出来なくなるなど、不利益を被る可能性がある為、多くの会社は離職理由を会社都合にもっていくことを避ける傾向にあります。
 
そこでどのような理由が失業手当をより早く受給出来る理由になるのかを整理しましょう。

特定受給資格者

以下のような要件に該当した場合は、「特例受給資格者」となり、離職理由に給付制限がかかりません。

【倒産など】
・倒産に伴い離職した者
・大量の雇用変動(1か月に30人以上の離職を予定)の届出が出されたために離職した者及び会社に雇用される被保険者の3分の1を超える者が離職したために離職した者
・事業所の廃止に伴い離職した者

【解雇など】
・解雇(自己の責に帰すべき重大な理由によるものを除く)により離職した者
・労働契約締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者
・賃金(退職手当を除く)の額を3で除して得た額を上回る額が支給期日までに支払われなかったことにより離職した者
・賃金が、当該労働者に支払われていた賃金に比べて85%未満に低下した(又は低下することとなった)ため離職した者
・離職の日の属する月の前6月のうちいずれか連続した3カ月以上の期間において、各月45時間を超えて時間外労働及び休日労働が行われたこと
・離職の日の属する月の前6月のうちいずれかの月において1月あたり100時間以上、時間外労働及び休日労働が行われたこと
・離職の日の属する月の前6月のうちいずれか連続した2カ月以上の期間の時間外労働及び休日労働を平均し、1月あたり80時間を越えて、時間外労働及び休日労働が行われたこと
・期間の定めのある労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより、離職した者
・事業主から直接もしくは間接に退職することを勧奨されたことにより離職した者
・事業所において使用者の責に帰すべき事由により行われた休業が引き続き3カ月以上となったことにより離職した者(従来から設けられている「早期退職優遇制度」などに応募して離職した場合を除く)

 
また、上記のような要件に該当しなくとも下記の要件に該当すると、「特定理由離職者」として、特定受給資格者と同様に離職理由による給付制限がかかりませんので、整理しましょう。

特定理由離職者

・期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者(更新を希望したにもかかわらず、合意が成立しなかった場合に限る)
・体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者
・妊娠、出産、育児等により離職し、給付期間延長を受けたもの
・父もしくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父もしくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合、又は常時本人の介護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合又は常時本人の介護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家族の事情が急変したことにより離職した場合
・配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した場合
・事務所の通勤困難な地への移転、事業主の転勤、出向命令や配偶者の再就職に伴う別居の回避などにより通勤不可能又は困難となったことにより離職した者

などが明記されています。実務上は、離職者の最寄りのハローワークにて決定されます。
 
また、事業主と離職理由が食い違うことも多く見受けられますので、よく話し合いをすべきですが、全ての人がどこまで話し合いが出来るかは未知数と言えるでしょう。
 
流れとしては、事業主が事業主の最寄りのハローワークへ離職票を提出し、ハローワークの審査後、事業主へ戻されます。その後、事業主から離職者へ離職票が送付されますので、その離職票を持って自身の最寄りのハローワークへ行き、そこで記載されている内容に疑義があれば、申し出ることが可能です。
 
(必要に応じて、離職者の最寄りのハローワークから事業主に照会をかけます)そして、離職理由が自己都合退職なのか、特定受給資格者又特定理由離職者いずれかに決定します。

高年齢求職者給付金

次に退職が65歳以降の場合は、失業手当ではなく、65歳以上の離職者が対象となる「高年齢求職者給付金」が整備されています。これは、65歳以上の方の失業手当と整理しましょう。特徴としては、一時金での支給となる点です。
 
一時金であれば、失業手当のように複数回失業の認定を受ける必要もなく、手続きの煩雑さを回避出来るのではないか?と考えられますが、受給額が失業手当より少ない点があります。
 
考え方としては、やはり、この年代になってくると再就職したとしてもそこまで高額な給与の受給は難しい場合も多いと言えるでしょう。そして、再就職時の給与より雇用保険からの給付の方が多くなってしまうと、「再就職した方がもったいない」という状態となりかねない為に、このような形態となっていると推察します。
 
参考までに高年齢求職者給付金の所定給付日数の上限は「50日分」です。
 
出典元 厚生労働省
https://jsite.mhlw.go.jp/nagano-roudoukyoku/content/contents/kounenrei_hihokensyayou3010018.pdf

64歳11か月問題

しかし、お気づきの方もおられるかと考えますが、「64歳11か月問題」という問題が問題視されています。失業手当の受給額が下がってしまう65歳になる前に退職してしまうという問題です。
 
これは、高年齢求職者給付金の導入を70歳からにすれば同問題の解消に繋がりうるのでしょうが、現在はそのような改正は予定されていません。
 
例えば、65歳誕生日の前々日に自己都合退職し、求職活動をすることで、失業手当として所定給付日数の最大150日分が受給可能であるのに対し、65歳に達して退職し求職活動を行っても所定給付日数の最大50日分しか受給できない点は無視できないでしょう。
 
これが、逆に65歳前退職の誘因となってしまっている感は否めません。構造的な問題と言えるでしょう。

派遣労働者

前述にて、主にいわゆる直接雇用の方々の解説をしてまいりました。次は派遣労働者の方々の解説に入ります。まず、派遣労働の特徴として以下をご覧ください。
 
出典元 厚生労働省(2頁上段を参照)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000102914.pdf
 
労働者派遣の流れとして、まずは、
・派遣元事業主と派遣先事業主との間で派遣契約が締結
・派遣労働者が派遣先事業主の指揮命令を受けて労働を提供
・派遣労働者が派遣元事業主と締結した労働契約を根拠として賃金が支払われる
 
上記のような体系となっています。結論としては、労働場所は派遣先であっても賃金の支払いは派遣元である為に、失業手当などの受給時に必要な離職票の発行義務も「派遣元」にあるということも理解しましょう。

休業手当

昨今のコロナ報道において「休業を命じられているにも関わらず賃金が全く支払われない」との労働者側の主張が散見されます。まずは、法律条文で「休業手当」を確認しましょう。
 

◇労働基準法26条
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。

以上のように定められています。つまり、会社の都合で休業を命じた場合は、休業手当を支払いなさい。ということです。判断が割れる要因として、これが会社都合であったか否かです。また、休業手当が支払われていれば、休業手当は賃金に当たることから、離職票に記載する必要があります。

不当解雇時の対応

上記の休業手当の支払いなど様々な要因で不当解雇にあってしまった場合を例に考えてみましょう。自身では解雇無効を主張したいが、日々の生活もあり、収入も途絶えた中、失業手当も受給したいというある意味、矛盾した感覚にもなり得ます。
 
当然、解雇無効となった場合は、労働者に「復活」することができます。また、不当解雇が原因で出社出来なかった為に賃金を受けられなかった場合は、休業手当と同様に給与の6割以上の請求が可能です。
 
そこで、不当解雇(認めるつもりはないが、生活も困窮している)で争う労働者の生活を守る為に、ハローワークでは、「仮給付」という制度が設けられています。また、この給付を受けたことのみをもって(誰しも日々の生活がある以上)裁判で不利になるとは考え難いです。しかし、あくまで「仮給付」である為、解雇無効となった場合は返還しなければなりません。反対に、解雇が有効であった場合には、そのまま失業手当として受け取ることが出来るので、労働者の方が不利益になるとは言えないでしょう。
 
しかし、不当解雇で争うにしても、失業手当を受給する以上は、離職票が必要であることは変わりません。よって、離職票の記載欄に不当解雇で争っている事実を記載し、手続きをすることとなりますが、不当解雇で争っていることを確認出来る書類の提出が必要です。例えば、訴状や、労働委員会によるあっせんの申立書及び受理証明書、和解交渉を行っている場合は、内容証明郵便による通知書などです。
 
また、仮給付の金額は原則として、失業手当と同じ計算ロジック及び金額となります。しかし、解雇が撤回されて復職した場合は、会社に雇われていたことになりますので失業していないこととなります。ゆえに未払いであった賃金が支払われるととともに、仮給付も返還しなければならなくなります。他のパターンとして、解雇は無効となったものの、会社に居づらくなり退職を選ぶこともあるでしょう。その場合の多くのケースは、和解(合意)した日が退職日となります。よって、和解日までの60%以上の賃金が支払われることとなります。
 
最も注意したい部分として、おさえておくべき点は、仮給付は生活の補填に充てるものであって、返還事由が生じた場合は、速やかにハローワークに連絡すべきです。時間が経過し、不正受給とみなされた場合は、3倍の額を返還しなければならないからです。
 
念の為、法律条文を確認しておきましょう。

返還命令等(雇用保険法10条の4)
偽りその他不正の行為により失業等給付の支給を受けた者がある場合には、政府は、その者に対して、支給した失業等給付の全部又は一部を返還することを命ずることができ、また、厚生労働大臣の定める基準により、当該偽りその他不正の行為により支給を受けた失業等給付の額の2倍に相当する額以上の金額を納付することを命ずることができる。

 
いわゆる「3倍返し規定」です。法律条文には「2倍」と明記されていますが、受給した額と、2倍に相当する額が対象となる為、「3倍の額」になってしまうと整理しましょう。

コロナ危機で活用したい他の手当等

給付金
今回のコロナ危機により、様々な給付が設けられました。中には、時限的な特例扱いがなされているものもあります。原則として、これらの給付などは「申請主義」と言い、申請しなければ給付を受けることが出来ません。よって、知らなければ、そもそも申請することすら困難と言わざるを得ません。その為に、確認していきましょう。

傷病手当金

新型コロナウイルスも含めて「療養のため、労務に服することができなくなった日」から起算して継続して3日を経過した日から労務に服することができない期間が対象です。また、期間は最長で1年6ヶ月間となります。これは、健康保険への加入が前提ですが、退職までに要件を満たしていれば、退職後も受給可能です。尚、支給額は直近12カ月の標準報酬月額を平均した額の1/30に相当する額の2/3となります。よって、おおまかには給与の月額平均の2/3程度となります。
 
尚、退職後も傷病手当金を受けられる要件としては、資格を喪失した日の前日まで引き続き1年以上被保険者であったことが要件です。所定の申請用紙と医師の所見などの記載が必要ですが、失業手当と同様に非課税で受給出来る点は大きいと言えるでしょう。

特別定額給付金

最も話題性のある、いわゆる「国民1人あたり10万円」の給付です。しかし、必ずしも家族全員が対象というわけではなく、以下に整理しましたので、確認しましょう。

・令和2年4月27日時点で住民基本台帳に記載されていること
・住民票記載があれば外国人であっても対象
・令和2年4月27日より前に出生し、同日時点で出生届を出していなかった子供は対象
・令和2年4月27日より後に亡くなった方は対象(家族がその方の分として受け取れる)
・令和2年4月28日以降の出生は対象外
・申請期限は3か月以内(原則として郵送かオンラインにて申請)
・世帯全員の給付金を世帯主の口座へ振り込む
・申請開始時期は市町村によって異なる。
上記がチェックポイントです。また、手順としては、以下のとおりです。
・申請書が送付されてくる
・必要事項を記載し、返送
・世帯全員分を指定口座へ振り込み

尚、所得税及び住民税は非課税です。

緊急小口資金

この制度はあくまで貸付ですが、最大20万円の貸付を無利息で受けることができます。返済猶予は最長1年間で窓口が社会福祉協議会となります。

総合支援資金

6-3と同様に貸し付けの制度ですが、額が少し多くなり、単身で45万円まで、無利息で貸し付けを受けることが出来ます。尚、2人以上の世帯では、最大60万円までが上限となります。

生命保険の契約者貸し付け

生命保険会社で細かい部分は異なりますが、解約返戻金の一定割合を貸し付けてくれる制度です。これは保険を解約することなく受けることが出来る点が特徴と言えます。場合によっては、再び保険に加入したい場合、年齢により解約前より保険料が高額となってしまう可能性も否定できません。

住居確保給付金

離職や減収により住宅を失う恐れがある場合に、家賃相当額が最大3か月間支給される制度です。(上限設定あり)自立相談支援機関が窓口となっております。

子育て世帯への臨時特別給付金

児童手当を受けている世帯に対して児童1人あたり1万円が給付されます。手続きは不要の方針です。

所得税・社会保険料等の免除

所得税を始め、住民税、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料、厚生年金保険料、国民年金保険料、電気ガス代、携帯電話料金、インターネット料金、住宅ローンなど、について、「免除」や支払いの「猶予」が設けられています。特に社会保険料の場合、「滞納」のままにしておくと、将来受け取る年金額が一生涯に渡って、滞納した分が年金額に反映しないこととなります。
 
猶予については、後で払わなければならないものの、再就職時など、現在より余裕が出来た段階の方が同じ金額を負担するにしても家計に与える影響も少ないと言えるでしょう。

最後に

ここまで退職した場合に受け取れる給付などを解説してきました。これだけ情報が発達した社会であっても、知っていなければ損をするという構造は否定できません。よって、必要な情報を必要なタイミングで賢く活用出来るようにしましょう。

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この記事の執筆者

蓑田 真吾

大学卒業後、社会保険労務士に合格。みのだ社会保険労務士事務所代表。医療機関に特化した社会保険労務士。